HETEROCHROMIA
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チンピラの夢.

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俺の女は何とも可愛かった

田舎者の背伸びなんて、周辺の奴等を喜ばせるに過ぎない

彼女は質が違った

毛色が違うんだ

他の者とは少しだけ違う身なりをし、大人のように何かを知った目をしていた

友達はダサいし、お母さんは言っちゃ何だがオバサンだ

色は白く、髪の毛はわからぬ程度にカラーリングされて、背中まで伸びていた

そこまで見えていたのはきっと見ていたからに違いない

この質の違いを仲間に説いた

彼らも次第に分かり、すばらしさに気づくころ、俺の女となっていた

それ以来、世の中で手にしたい欲求は消えた

 

今思えば若いころ

手に入るはずだったものはすり抜けていった

俺の女が全てだった

後悔があるならそれだけ

それを伝えておけばよかった

 

俺の女は俺のブスになった

それが丁度よかった

そんな男だった

その程度の男でよかった

ブスは俺になついた

その分愛でた

日に日にエラは削られキレイになっていく

カバンからはおやつが減り

それが嬉しくも悲しかった

ぼんやりしたはれぼったい目、鼻ペチャで横に広い顔

それでよかった

洗練されていく

それが愛だと彼女は言ったが

ブスは女になる

俺の髪の毛はいつのまにか背中に届いてる

何もない俺から

誕生日にはこれをあげよう

君に足りないロングヘアー

もう俺にはいらない

強がってもむなしい人

酒を飲んで、忘れて

もしも目が覚めたら

たぶん好きだと言う