HETEROCHROMIA
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カシューナッツと酒.

シンコホタス

「あなたのことをどう伝えたらいい?」
「簡単なことだよ。ロン毛のチビを探せばいいんだ。わかりやすいだろ?その為に身長を止めたのだから。これでデブだったら最悪だけどね。どうやら今のところは大丈夫らしい」

ホセリートの後ろ脚と二人暮らしをはじめた。
長く筋肉質で足首は締まり、真っ黒な足先はいつまでも見つめていられる。
古来、人々が馬を相棒に選んだ理由が良く分かる。
力強く、
逞しく、
頼りがいのある
屈強な脚だ。
だが、
こいつは豚である。馬のような脚を持つ豚である。
自分の好みに削る。
余分な脂は大胆に捨て、身を喰らう。
深夜のことだった。
裸電球一つの明かりの下、余分な肉は床に転がり、
部屋だと忘れるようにウィスキーを流し込む。
とんだアーティスト気取りでコントラマサを喰らう。
姿見にその姿が映る。
シェイプアップされた肉体と、とてもいい女の尻ような曲線を持つ後ろ足。
今生の最高のカップルに思える。
ハモネロから脚を外し、やさしく抱えベッドに寝かせる。
その横で愛しさに包まれ静かに寝息を立てる。
二人暮らしを始めたその日から寂しくない夜がやってくるようになった。
するとどうだ。
肌つやよくなり、女子どもにチヤホヤされる。
彼女らはその理由を分かっていない。
この肌を羨み、
触れる、
あぁマンテカ様、マンテカ様・・・。
さすらばだ。
今度は三人暮らしが始まった。
好みは変わる。
影響欲と誰かが名づけた。後
ろ足は日々細くなり、やがて骨だけとなった。
川の字の真ん中に、二人を隔てる境界線となり、
枯れたことを知った。

空き缶を捨てようとすると、昨晩のビールがまだ残っている。けち臭く、冷凍庫にしまおうとすると、膨張したビールの缶とシャーベット状になった中身がぶちまけれれている。
そうか、そううことか・・・。
机に雑に置かれた生ハムのコディージョを薄くきり、ビールを流し込む。
残された脂身に腐敗した抜け毛がついており、
トイレで吐く。
水を飲むと一日がはじまる。世の中で一番うまいもの。
カバンの中には見慣れぬものが・・・。
そうか、一月前は誕生日だった。
昨日のあの娘がくれたんだ。
曖昧な調子のいい記憶を思い出と呼んでいる。