HETEROCHROMIA
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いまだいる

天使の涙のイントロが聞こえる

後にフライングピケッツだと知った

記憶が二つ蘇る

一旦、目を瞑る

エアコンに慣れ親しんだ体

遮光カーテンを閉じる

なんて

いい夢を見ようとも

現実的に煙草は短くなる

何枚にも重ねられた柄のシャツ

ビニール袋に溜まった空き缶

 

同じ夜とてドラマはないと

隣にたまたま座っていた俳優が言った

男受けするきちんとした役者

彼とは根っこが同じだ

そう感じたが、言えるわけもない

似たような柄なのにこちらはくすんでいる

言葉を合わせることは出来たが、惨めに過ぎない

やめた

もう仕事は終わっている

ポケットからあぶく銭を取り出して

「一杯、付き合ってくれ」

彼はそれに応じた

彼は彼であり彼でない

もう一度、曲が流れる

同性愛は知らないが、きっとそういうことであろう

 

朝が来て、夜が来て

時折、彼と顔を合わせることになる

時には二人でタンゴを踊り

朝を迎えに海に行った

ポッと出たキザくさい言葉を彼は黙って聞いている

懐の深さは計り知れない

たとえ幻想だったとて、それが彼でなくとも

存在し、そう思わせる

富も名誉もなく

プライドも知らず

染まる

 

昼になりニュースを見ている

キャスターはどっちを向いている

椅子とソファーに差が出来た

誰も座らない椅子

トーストを焼く

ジャムは端っこまで丁寧に塗る

ジジに食べさせていたころの習慣が残ってる

パンツのたたみ方は昔の女

いまだいる

トーストの咀嚼音

あれだけのことはあれしきで

口の中で混ざっている

ものの考え方を問われてるようだ

自己プロデュース能力

彼はどこで彼を演じ、僕はまだ彼を知らない

爪を切るとこを見たことがない

髪を乾かす姿も

別にいい

自転車に二人乗りして、ショーケースに反射する姿を見た

軟弱でオカマのよう

気がつけば

滴り落ち

路上に痕跡を残す

恥なんて誰かの尺度で生きているからさ

所詮

自転車よすすめ

忘れていた

俺は俺だった