HETEROCHROMIA
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チンピラの夢.

チンピラとアーモンド

 

チンピラの虚勢とチンピラの余裕は対になっており

不幸な女が隣にいれば泣けてしまう

その先は想像で

ラーメン屋に勤めて男を愛そうが相違ない

人生は悔いだらけ

どうせ酔っ払って酒の入ったコップを投げつける

そうしてまた泣くんだ

もう、アーモンドに塩はいらない

確かにそう言った

交わらない二人

互いに干渉するのを恐れる

依存を知っているから、やめているんだ

 

でも、あるとある夜は存在して互いを知ることになる

こことは違うどこか遠くの誰か

 

流行にのれないラーメン屋にはそこに住む昔からの挨拶もない客が週刊誌を読みにくる

若者は漫画

彼らはそこらで顔を合わせるがやはり挨拶はない

チンピラのおっさんはそこではまだ下っ端で、顎で使われる

それでも、カップルの男が彼女に死ねなど言ったなら、反射で殺すぞと凄み湯切りをす

扇風機は大概回っていて義理の父と飲むには丁度よい

おい、息子よ 

天津飯なんて頼むんじゃない

チンピラは何も言わないが、隣のオッサンは夕刊フジを置いて店を出る

そこで昨今のAV女優が垣間見えようが漫画ゴラクよりまし

想像範囲内の喧嘩後片付け

雑巾掛けと帚

何てアナログはみじめなんだ

 

弊店間際のスーパーでつまみと発泡酒

家が暗いのは知ってるから川沿いのベンチに腰掛ける

どこからか若い娘がやってきて隣に腰掛ける

「おじさん、なにそんなことをやってんの」

チンピラは泣けてしまう

娘は勝手に膝の上のアーモンドをつまむ

塩はもういらない

懐かしいはなし

誰かの人生のはなし