HETEROCHROMIA
this project is filed under
●.

ダメナヒト

ダメな男と一緒になった。なんとなくだめな節は知っていた。
お酒をのめばいい加減なことを言う。
それでも優しく酔っぱらいの言葉からは
他では聞けない旋律のある愛が流れた。

男は一緒になることを拒んでいた。
自らに業をかしていた。
私にはそれが分からなかったが、男は頑なにそれを拒んだ。

彼には自信がない。
彼の言葉を借りていいだろう。
生まれてこの方一度も夢を持たず、人に迷惑をかけない暮らしを続けていた。
私でなくても彼に魅力感じる女性はいる。
ただ、彼にはその魅力が見えないらしい。人を惹きつける悲し気な横顔と、知性ある喋り。
何よりもユーモアがある。
礼儀もあり真面目でもある。どこにだしても恥ずかしくはない。
怠惰を除いては。

それでも、
それは君だからだよと付け加える。
それでも彼には自信がない。生まれながらにダメな男だと信じている。

可哀そうだ。

そう思えれば余る分の愛を全て捧げようと思う。

彼はそれを断る。
私になんて勿体ない。
他にあげればいいと。
あなたで生まれた愛なのに他人に上げるなんて・・
何とも悲しいことだ。
愛を否定されれば絶望に似て、得もつかぬ感情が生まれても仕方ない。

きっかけが何であったかなんて構いはしないよ。
それでも彼は恰好をつけたがる。
ダメな男のくせに。
いつか離れ離れになることを知っている。
幸せの束の間を私は今生きている。