HETEROCHROMIA
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◇.

大体、あさってをむいて

隻眼の若者は鴉が嫌いだ

隣を過ぎる際には目を瞑る

どっちみち黒だね

誰かが言ったが

鼻で笑ってやった

 

鳩が

嫌いな女がいて

鴉に餌付けする親父がいる

二人は交わらない

陰口を男は聞く

 

親父のことは知っている

丁度仕事に向かう夕暮れ時

川沿いにポツンと立ち

空を見上げている

椋鳥が大勢でボイドしては

電線に止まり休む

晴れた日はいつもそうだった

男はいつからか真似て

自転車を止めては

しばし

空を見上げた

あるとき自転車は盗まれた

そばには鍵つきの原付があった

それに跨ると仕事には遅れなかった

朝は鴉で

夕べは椋鳥か

親父の横を過ぎるたび思う

毎朝

誰かを考えるなんて

これが罰ならば

罪を犯したせい

 

鴉が罪ならば

理不尽な考えのせい

鳩が罪ならば

平和は欠如する

 

男は親父を過ぎると広場へ出る

鳩が群れを成し

人が休む

通り際に

帽子を

高々

投げる

鳩は飛ぶ

釣られて

他の

喜ぶもの

嫌がるもの

彼女もそこにいる

男は帽子をキャッチして

それらに笑いかけ

笑われて

自転車を漕ぐ

 

鴉には今はまだ

目を瞑ろう

今はまだ

この眼がビー玉と信じてる