HETEROCHROMIA
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チンピラの夢.

辛いのと甘いの

同棲を始めた。

そういっても、金がない俺が彼女の家で寝てたらそうなっただけ。
週に3,4日が7日になっただけ。
それにしてもどうかしている。
まぁ、いい。
家はまだある。
彼女は嬉しそうだった。
夜になれば彼女を腕に乗せて眠った。
酒の量も半分になり、朝方が気持ちよく感じた。
体調も良かった。彼女が朝に食わせるヨーグルトのせいか。
仕事も苦に感じず、家に帰れば飯が用意されている。
それが一週間のこと。
彼女は辛いものが好きだ。
昔から知っている。
僕はというと嫌いではない。
並の人間の考えなんて並の人間には通用しない。
そのことを実感した。
食卓の料理は都度都度辛い。
辛いと思われる料理は辛い。
そうでない料理も辛い。
不思議だ。
そんなに調味料は見受けられないし、
彼女の手で粘膜を触れらても痛くない。
僕はいつも「辛いね」という。
それで気づいて欲しい。
彼女は食後に甘いものを食べる。
僕もそれに付き合う。
甘いのと辛いの。
毎食、毎食。
悪気はない。
軽い拷問。
こんなことを考えるなんて。

昨今の食育に疑問を呈する団体が噂を聞きつけてやってきた。
不思議な光景だった。
何にもしてない彼女がどこぞやのババァに抗議されている。
ババァは口うるさく正義を振りかざした。
彼女は椅子を持ち上げた。ババァはほうきを振りかざす。
やれやれだ。外で待っていても、物音は鳴り止まない。
僕は家に帰ることにした。
そうして3日が経つと、辛いのと甘いのを口にする。
そうか、そういうことか。
調子はまた悪かった。
僕は彼女の家に向かう。
家は荒れ果てて、彼女はいなくなった。
甘くも辛くもなくなった。
調子はずっと悪い。
朝はヨーグルトを食べることに決めた。

寝る前に彼女がヨーグルトを食べる訳を尋ねたから、教えてあげた。
相変わらず僕は少しだけ酔っ払っている。