HETEROCHROMIA
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◇.

冬のチンピラは職質を受けない

冬のチンピラは職質を受けない
ただ
愛のないセックスを知る
片膝立ちの女の孤独に寄り添うことも出来ず
背中をなぞり
めりこむ指
酒を紙袋で覆い、
片手には味気のないパン
精肉屋の娘と鍼灸師の男は
まるで
あざ笑うかのように
体を重ねる度に快楽に浸り
やがて
娘は男を解体して口にした。
「なにしてんだろ、わたし・・・」
倒れもしないのに割れる瓶
朝になれば
酒焼けした真っ白な床
古びた丸椅子に座る女は膝を抱え
うつ伏せのチンピラを見る
初めてだけど久しぶりの光景
誰に勝ることも出来ない
夢では歯ばかりが抜ける
起き上がり
素肌にシャツを羽織る
煙草をふかす
女は後ろから男を抱き、髪を撫でる
「退屈だ。なんて退屈な日々なんだ」
ユニットバスのドアを開けると
精肉屋の娘が泣きながら血を洗い流す
二人はその姿をじっと見守る
ともに可哀想だと感じる
皆が皆
可哀想で
その姿を晒す
三人は分かっているから口にはしない
夏には警官がわかった素振りでクンロクす